直前に同点弾を浴びたマリノスにとって、長澤に高いボールを集めるのが脅威なのは変わらず。パクジョンスを投入したものの、アデミウソンを軸としたガンバの優勢な攻撃は止まりません。
またしても90分で決着をつけられないのでしょうか。今年、日産スタジアムでガンバと戦うのは3度目ですがいずれも土壇場で追いつかれていたからです。
前田直輝が、マルティノスが、齋藤学が、サイドを攻め上がってチャンスを作るマリノスの攻撃パターンは一貫していました。スピード勝負に難があるのはガンバの最終ラインもマリノスのそれと同じことで、スピードで挑むのは悪い方法ではありません。
中村俊輔が、3ヶ月ぶりにピッチに立ったのは、その同点被弾の直後でした。体のキレがいいとは思えません。けれど、攻撃のけん引役である齋藤学と、中村俊輔が同時にピッチに立っている存在感は小さくありません。
家本主審が告げたアディショナルタイムは6分。90分が過ぎた頃は、中盤でことごとくボールを奪えずに、ガンバがいつ仕留めるかという流れだったにもかかわらず。俊輔のフリーキックが、ロングパスが、少しずつガンバに行きかけた流れを変えていきます。
そして95分。ガンバの攻撃を凌いだマリノスがボールを握ると、センターラインで受けた俊輔はまたもや長いパスで逆サイドに張る前田直輝へ。その前田は、エリア付近まで持ち上がりますが、ガンバの最終ラインは1トップの富樫敬真をがっちり捕まえて、後ろから上がって来た俊輔のケアも怠りません。
彼らへの警戒意識から生まれた空間の隙に上がって来たのは天野純です。その天野を指差してパスを指示するのもまた俊輔。
天野は最初のトラップで得点できたと思ったと言います。富樫と学に引っ張られていた守備陣が慌てて天野に詰めますが、それを打ち破る確かなシュートテクニックで、サイドネットを揺らす勝ち越しゴールが生まれます。
一瞬の隙をついた、決勝ゴールが4回戦の新潟戦に続いて天野純だったことに、驚きと歓喜のスタンドが一転して、一刻も早い試合終了を願うように。
そして、ガンバ3連覇の挑戦を砕く長い笛。元日、おたくのホームスタジアムを使わせてもらうまであと1勝。
後半はアデミウソン、最後は初瀬などの決定力が足りなかったガンバでしたが、天野純の幻の(疑惑の?)ミドルシュートがマリノスにもあったので、トータルとしては妥当な2-1というスコアだったのではないでしょうか。マリノスが中澤佑二、榎本哲也の連続パスミスで絶体絶命のピンチを招いた際も、シュートミスに救われるなど、強かなガンバは鳴りを潜めていました。
一方、雑音の多いチームにあって、学、天野、前田、富樫、新井らの試合終了時のやりきった感は頼もしさを感じました。喜田拓也だけは鼻骨を折ったこともあり、精根尽きたようにピッチに突っ伏していましたが。特に学はこの日も、一人だけ見えてる世界が違うかのようなプレー、しかも緩急をつけたペース配分が度々相手守備陣を翻弄していました。
この学がいる限りは、相手は学対策に手を焼き、必ずや他に隙が生まれることでしょう。準決勝の相手が「世界2位」となった鹿島であってもです。
目標に向かって気持ちを一つに。などとはとても言えないチーム状況を、なんとかまとめ、導こうとしている学。小林祐三とともに元日までを合言葉に準決勝まで来ました。天野純が真っ先にベンチに向かい、小林と抱き合ったのはチームを一つにという思いがあったことは想像に難くありません。
準決勝は12月29日、ヤンマースタジアム長居にて、鹿島と決勝進出をかけて戦います。
雑音だらけのチーム状況の内側が、急に良くなるとは考えづらいものの、プロ選手の集合体としては出した結果によって、本能的に勝ちたい気持ちが高まってくることはあるでしょう。
誰のためでもなく、ただ勝ちたい。仮に、今のチームの何人かが早晩にチームを去ってしまい、来年まったく別の姿に生まれ変わるのだとしても。
大の苦手の準決勝を、しかも苦手の鹿島相手に突破するには、何か見えざる力が必要かもしれません。それは若い天野の勢いなのか、キャプテンの一振りなのか、柱となったエースの力なのか。全てが良い方向に出せるのか、マリノスというクラブの底力が試される時です。
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