飛べ、学!
俊輔の左足から放たれたのは、相手の急所を突き、しかも味方が押し込みやすい、極上のボールでした。
あの日。1年前の9月に富樫敬真が飛び込みFC東京のネットを揺らしたあの日のように。それに似た時間帯。取れば、勝てます。
フリーだ! 来た!!
しかし無情にも学のダイビングヘッドは、枠外。
後半、とりわけラスト15分だけで、どれほどのゴールチャンスがあったことでしょう。
その一つでも、モノに出来ていたならば、マリノスは首位の座を譲らなくて済んだのに。
最後の最後まで、勝ち越しゴールを期待するスタジアムの盛り上がりが途切れる事はなく、またその期待が歓喜に昇華することもありませんでした。
負け惜しみのように聞こえるかもしれませんが、こんな歯痒い展開を見せられて、だからこそマリノスサポーターは止められないなと、試合終了の笛を聞くとともに思ったものです。
もう少し、あと少し。そこが届かない。それが狂おしい。チームの勢いが本物だったならば、見えざる力でもう1、2点取れていたかもしれません。
が、思い出してみれば、1stステージの順位は11位です。今日監督解任が発表されたFC東京に敗れ、逆に監督は続投と異例のコメントが社長から出された名古屋にも敗れたのが我がチームの現状ではありませんか。
アデミウソンがフィットして快進撃が始まったのも、去年のこの季節。
今年もですよ。カイケ、マルティノスの両外国人選手がもっと早くフィットしていたら違ったかもしれませんが、ようやくという感じですね。
その中で、このようにチャンスを作り、オープンなゲームとなったために榎本哲也にスーパーセーブを何度もお願いしてしまいましたが、チャンスを多く作っていたのはマリノスのほうだったと思います。
特にボランチの差は明らかで、セカンドボールの争奪戦で見せた中町公祐と喜田拓也の強さと速さはマリノスの攻撃に安定をもたらしました。ただ失点シーンで川辺に決められたミドルシュートを中町は寄せきれなかったのか。結果論ですが、悔しさが残ります。
ボール奪取といえば、結果的に唯一の得点となった場面。きっかけは中村俊輔の前への守備でした。マルティノスとカイケが二人で崩したコンビネーションと、この試合で唯一かな、カイケを褒めたい正確な左足のシュートは見事でしたが、俊輔の守備は効果大です。
この得点後は鳴りを潜めましたが、俊輔の裏への抜け出しは特筆すべきプレーでした。
前半5分、9分など、俊輔が飛び出す場面はどれも息を呑むものでした。
これはエリク・モンバエルツ監督の指示だったのでしょうか。
その質問に監督はハッキリと答えてはおらず、インテリジェンスの高い選手だと評しています。すなわち磐田が高いラインを設定し、裏にスペースがあることは分かっていたことで、そこをいつ狙うべきか、俊輔は分かっている選手だと評価しています。
俊輔の価値は、そのスペースに選手を走らせて質の高いパスを送れることにあるのはもちろんです。加えて、誰も使わないと見るや、空いているスペースを自ら使おうとして、脅威を与えました。監督の直接的指示ではないとしても、意識があったのだと思います。
ただし、縦に早い「だけ」のサッカーは見ている分には楽しいものの、費用対効果という点ではかなり改善の余地ありのようです。
中澤佑二は「分厚い攻撃ができず、相手にカウンターを食らって、そのあとまたガーッと攻める展開が続く。『行け』と『取られた』の繰り返し」
中村俊輔は、「ゆったりと攻めながら押し込む。遅攻というとネガティブな響きに聞こえるかもしれないけど、そういうこともやっていかないといけない。攻めて、取られて、また取り返して攻めてだけでなく、大人のサッカーができなければいけない」とコメント。
ボランチからの押し上げ、両翼(学とマルティノス)のスピードある仕掛けがあるからこそ陥りがちな、速さ頼みの攻撃に疑義。まだまだ、相手ゴールを陥落させる絶対的な形が確立されていませんね。
それを手に入れるまでのプロセスは楽しい。でもマルティノスが、もしもゴール前での落ち着きを見せはじめたら、あのスピード違反に対して、中国や中東からステキなオファーが届いてしまうかしら。そうなったら、またやり直し。
噛み合ってきた今に勝負をかけたいですね。
まだたった5試合を終えて、トップと勝ち点差2位。無敗は堅持。
ますます夏が楽しみになってきました。
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