蹴り直しの判定。中村俊輔がペナルティキックを蹴る前に、エリアに中町公祐が侵入したというのが家本主審のジャッジでした。
笛を吹くと決めていたかのようにドヤ顔の主審に対し、苦笑いのキッカーは想定内だったと言います。
再びボールをセットし、一瞬の間。先ほどはGKの逆をついただけに、嫌な予感があります。
今度は、逆の右隅へのキック。しかし韓国代表のキムが飛んだのも同じサイドでした。それでも俊輔の蹴ったボールのスピードが上回ってゴールイン。
後半早々に、相手陣内のリスタートからパスを繋がれて、呆気なく2点のリードを奪われていたマリノスはこれで2-2の同点に追いつきます。
積極采配で、カイケに代えて伊藤翔を投入し、勝ちにこだわるマリノス。神戸の足が止まって受けに回った今なら、チャンスはあるかもしれない。
それが実を結んだのが、5分のATに入った直後です。齋藤学がゴールラインギリギリを切り込んで、センタリングします。伊藤が触れなかったボールは神戸のDFに当たって、あわやオウンゴール。これをどうにかキムがセーブしたそこには、マルティノスがいました。
「オフサイドかと思った」と、どこが？という謎のコメントを残すこの男が大逆転劇の仕上げ役となりました。
喜びを爆発させ、ゴール裏へ走るマルティノスを祝おうと、中町や伊藤が後を追いますが、みるみる離されていくそのスピードは圧巻でした。笑
2失点目の直後に、カイケがすぐ取り返してくれたことが非常に大きかったです。警告を受けてしまったけれど、すぐに得点者がボールを奪い返す姿勢、チャンス後にゴール裏の声を煽るポーズは今までのカイケの印象を変えるものでした。
運動量少なく、淡白なカイケが見せた意外な一面に、いい意味で驚いた方も多かったのではないでしょうか。
後半開始から俊輔を入れたという采配。縦にシンプルに早く、裏をひたすら狙っていたマリノスがポゼッションを高めるようになります。
そのギャップに神戸は「修正に時間がかかった」と苦しんだとネルシーニョ監督は言います。
途中から入った俊輔の貢献ばかりに目が行きますが、2トップという形を大きくは崩さなかったのも意味があるかもしれません。
即ち俊輔は前に残り、後ろからは中澤佑二が度々、ハーフラインを越えて鬼気迫るクリアを見せます。
二度三度と、退くんじゃねぇ、相手ゴールに向かえ！というゲキが、チームを勇気付けたはずです。
0-2とされたこと自体はまずかったとは言え、下位チームに連勝してから、中位の神戸にも勝てました。しかも諦めることなく、力で押し切って。3連勝の意味は、これから優勝を争う挑戦権を得たことにあります。
マリノスの年間順位は5位に浮上しましたが、その上にいる4チームとは即ち、川崎、鹿島、浦和、広島です。次節広島に勝利すればこの順位は入れ替わるものの、残り3チームとの差は大きいです。3位浦和との勝ち点差は11。
チャンピオンシップに進むには、この2ndステージを獲る以外にないでしょう。
1stステージ終盤の不振から一転、ほぼ潰えかけていた「夢」に期待が膨らんできてしまいます。小林祐三が言うところの「3連勝したら、クラブも選手もその気になる」というものです。
シーズン後半に上位との対決が残されているのはラッキーかもしれません。
まだ強くなる必要があります。
まだ強くなれると確信しています。
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