昨年、樋口靖洋前監督の後を受け、当時の嘉悦朗社長が後継指名したのがエリク・モンバエルツ監督でした。
触れ込みは、マリノスの伝統・堅守は保持しつつ、長年の課題である攻撃を構築できる監督。
就任1年目は結局タイトル争いに絡むことはなく、2年目となっても縦に速い攻撃を掲げるものの大きな進捗を見せたとは言い難い。その背景には、昨年は「飛び道具」とも言えるアデミウソンを手駒に加え、彼に大きく依存した戦術しかなかったと捉えることもできます。
果たして監督の手腕とは?
とりとめもない分析になるのは確実ですが、考えをまとめてみたいと思います。
監督にも野心家、革命家というタイプと実務家、堅実派という分類があるとすると、後者でしょう。
また攻撃的か守備的かで言えばこれも後者。能動的、受動的という言葉で置き換えても後者。
どちらが優れているという議論ではなくタイプの問題です。ただ、名将とされる監督はどちらかというと前者に多く、フィロソフィー、その監督の色というのが明確で、サラリーも高い傾向にあるかと思います。
世界的に見ても、真の意味で自ら攻撃を構築できる監督は多くありません。ほんの一握りの革命家によって新たな戦術やシステムがもたらされ、残りはそれを研究し対策する。その繰り返しが歴史となってきたようにも感じます。
例えばベタ引きの相手を攻略するにあたって、圧倒的な戦力差を用いる以外、画期的なソリューションを持っている監督、チームなどそうはない、とも言えます。ですから、モンバエルツ監督が「ほんの一握り」ではないからといって、名将ではないと言うのはちょっと違うでしょう。
もちろんボールは保持するが、ブロックの外側で横パスばかりを繰り返す試合を是とするつもりはありませんが。
感心するのは選手起用に対して公平さと透明さを感じることです。何度も不満をのぞかせていた藤本淳吾や富澤清太郎のように、もちろんエリク就任によって、出場が減った選手にとっては感じ方は違うかもしれません。全選手が満足、納得というのはそもそもありえませんから。
就任前と変わったのは飯倉大樹、ファビオ、喜田拓也が入り、榎本哲也、栗原勇蔵が控えに回ったこと。でも、先日の遠藤渓太や昨年の富樫敬真の例を挙げるまでもなく、「よい選手を使う」ということに信頼感を覚えます。
昨夏に俊輔が出番を失いかけた時もそうでした。彼が離脱した間に確立された戦い方では俊輔は使いづらかった。だからボランチで俊輔を組み込もうとした。でも結局は俊輔を使う方法のほうが結果が出ると分かったので、ガラリと変えた。
そこには変な固執も嫌らしさも感じません。結構、これって大事なことのように思います。いい意味で義理人情がないというのは公平ですよね。
ただしマリノスはこうあるべしという哲学がそれほど強いとは感じさせません。そのためか、選手交代など、予定調和というか、極めて堅実です。さすがに動かざること山の如しと、「地蔵」の異名をとった樋口監督に比べると、よりフレキシブルな交代策を見せますが、策士というよりもセオリーに則った役人型の印象があります。
総じて言うと、チームの良さを率直に出せる監督。それは一定以上の監督と言えるのではないでしょうか。
ですが、革命は起こしません。
10の戦力を10出せますが、15にはできません。
そのため力が上位のチームには、割と素直に力負けしてしまう。またうまくいかない時、即時に劇的な修正は不得意なので、時間切れで下位に取りこぼしてしまう。
昨季降格した松本、清水、山形から勝ち点3を取りきれず、今年も早速福岡と引き分けてしまいましたが、これでは優勝争いはおぼつかないですよね。
だからこそ得点力アップのためにエース候補が加入した今、その良さを引き出す監督の力に注目が集まります。
短期間でカチッとピースをはめて結果を出したら、やはり名将と呼んでいいのではないでしょうか。
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