この日の18本目のシュート、中村俊輔の左足から放たれたミドルシュートはGK徳重に弾かれます。
その先には、右サイドバックにポジションを移していた三門雄大の姿。瞬時に身を投げ出した三門は、自身で強引にシュートすることが頭をよぎりながらも、懸命にボールを折り返します。
オフサイド・・・は、ない!
途中出場の齋藤学は、フリー。丁寧に右足のインステップで、ゴールに流し込みます。
これが19本目で、この試合最後のシュート。94分。
中澤佑二の500試合出場を白星で飾るとともに、首位と勝ち点6差ながらわずかに優勝への希望をつなぐゴールとなりました。
この試合は、幾つかに分けるべきだと思います。
マリノスが支配しながらも、簡単な相手のロングパスをファビオが処理ミスした神戸の先制点までの30分間。
次に40分にMF前田が退場するまで。
最後に、マリノスの後半の猛攻、とくに2枚目に富樫敬真を投入する選択の意味。
まずファビオのミスは、論外でした。プロでは考えられないプレーです。あれで一気に意気消沈してもおかしくなく、その後の石津の決定機を、どうにか飯倉大樹が防いでくれたことの意味は小さくありません。
マズイな神戸の流れかな、の直後に、エリア内のクリアしようとした喜田拓也の足を、スパイクの裏で削った前田が2枚目の警告を受け退場。1人多い状況になりましたが、すでに1点のビハインド。
相手がベタ引きになることを誘発すると考えれば、果たして退場者が出たことが良かったのかどうか。当然、じわじわゆっくりと自分のペースで攻めるだけではダメです。
その中で、伊藤翔、アデミウソン、俊輔辺りのチェイスは感動的であり、中2日の試合で動かないはずの体が途中から軽やかに見えたのは確かです。マリノスは実に積極的でした。
半ばハーフコートゲームになった後半、早々に齋藤学が呼ばれます。持ち味を出したとは言えない天野純に代わったのは54分。絶対に2点がほしいマリノスは予想よりも早い交代です。
その10分後に今度は、富樫を投入したのですが、なんとセンターバックを1枚削る決断。富樫はよく競り合い、よく裏を狙い、相手に脅威を与えています。
さらには、喜田拓也に代えて、兵藤慎剛。相手が1枚少ないこともあって、絶対に点を取れというメッセージでした。「リスクをとれ」というハーフタイム時のメッセージを表すような采配、モンバエルツ監督は、ああ見えて、ギャンブルがお好きかもしれませんね。
終了時はGK飯倉で、DFは右から
三門、小林、中澤、下平
ボランチに
俊輔、兵藤
2列目に
富樫、学、アデミウソン
1トップは伊藤翔が最後まで頑張りました。
試合後にお立ち台の上で、茶化していた中澤佑二のコメントが実に的確で面白かったので、紹介します。
「こんな劇的な勝利になったのも(先制点につながるミスをした)ファビオのおかげ。アデミウソンのゴールは素晴らしかったが、一回できめてくれよ」
まさに言い得て妙。アデミウソンのエリア外からの精密な同点弾は凄かったが、その前にもっと簡単に決められるでしょ!というのが何回かありました。でも、同点の瞬間の咆哮、カッコ良かったな。本当にチームのために戦える選手です。
苦労して、ようやくこじ開けた神戸ゴール。しかも7分間で2回。
優勝を語るチームには、チーム全体がイケるぞ!となるような、劇的な勝利が必要です。それが今日だったかもしれません。
幸せな勝利でした。興奮がしばらく止むことはありませんでした。
これで3位に浮上も、残念ながら鹿島と広島がともに勝ったために勝ち点6差は変わらず。でもまだ可能性はあります。
あと3試合。マリノスとしては何しても勝ち点を34にまで積むしかありません。
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