【保存版】中村俊輔がシャーレを掲げる

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10の帰還。我らが見たいマリノスはどっちだ?(山形戦 総括)

試合前、富澤清太郎のゴール裏でのお別れ挨拶がありました。

時刻はキックオフ1時間前の午後6時過ぎ。いつもならあと20分もすれば、ウォーミングアップのためにピッチに登場する時間です。

この日の富澤は一人きりで、ジャケットを羽織り、神妙な面持ちでこう言ったのです。

「自分の力が足りなかった…」いつも漢らしい、富澤にしては未練のある、どこかでボタンが掛け違えてしまった、けれどその時間が巻き戻せないことを誰よりも理解し、悔いている、そんな挨拶に聞いている我々は胸が詰まりました。

2012年の樋口靖洋前監督の就任時に、自らが獲得を熱望したとされ、キャプテンを務めていたヴェルディを惜しまれつつもマリノスに加わり、彼が支えたのはチームであり、尊敬する中村俊輔でした。「近年最強」の2013年シーズン、チームも輝きを放ち、MVP・俊輔も、優秀選手に選ばれた富澤も絶対的なレギュラーとして君臨したのです。

その富澤がチームを去るということは、あの時代が終わったことを意味します。良いか悪いかを議論するのではなく、感傷的に言っているのでもなく、俊輔を頂点(王様)に、攻撃を補佐する中町公祐と、守備やバランス、ビルドアップを補佐する富澤。その一角がチームを離れるということは、ドラスティックにチームが変わったとしか言いようがありません。

その節目に、中心選手・背番号10はピッチの中心に帰ってきました。中村俊輔、ようやくの今季初スタメン。

ポジションは富澤がいた、左ボランチというのも数奇な縁。そして、俊輔自身が決してボランチを志向しているわけではないことは復帰途上のコメントからも明らかでした。彼らの判断で、意図的に攻撃を遅らせることをエリク・モンバエルツ監督は良しとしない、とも聞きます。

急所をつくパスも、鮮やかなサイドチェンジもなく、とくに後半は山形が引いて守ったこともあり、決定的な仕事はできませんでした。俊輔が交代した直後に、絶好の位置でフリーキックを得て、俊輔に代わった兵藤慎剛が左ポストを叩いたのも、皮肉であり、そこに詰めた三門雄大が押し込めなかったのもこの日のマリノスの拙さを象徴するようでした。

このフリーキックの巡り合わせは不可抗力として、俊輔はやけに無難に、セーフティードライブモードで、味方のポジションや特性を改めて確認するかのようなプレーに終始していた印象があります。あるいは知らず知らず、ボランチに窮屈さを感じていたのでしょうか。

ただまずは俊輔の直感にしたがってプレーしていたのでは、監督の信頼を得ることができない、まずは監督の求める通りにダイレクトなプレーを求め、演じていたのかもしれません。そして、手探りながらも、俊輔がボールを持つことによって、齋藤学小林祐三らが自信をもって飛び出していけるようになったのも事実。

先制点の場面以外にも、前半はよい崩しを見せてくれました。それにもかかわらずまたもや集中力の欠如が原因と思われる「一瞬の隙と不運とが重なる形」でお約束のように失点。その時間帯が最悪だったわけですが、恐らく山形にとってはプレーと心のバランスを取り戻す最高の贈り物になったと言えるでしょう。6月末の2試合では、広島とG大阪相手に2試合で8失点の守備が、トータル1失点で踏みとどまったのですから。伊藤翔の抜群のステップと、山形DFの軽い対応によって齋藤学の今季2点目が生まれた前後は、何点もマリノスが得点する雰囲気はあったのに。

ただ後半、今までと変わらず引いた相手を崩せないことにガッカリしたのは確かですが、それはいくつかの決定機を逃した上に、やってはいけない時間に同点ゴールを献上したことがすべてだったように思います。勝って当然は言いすぎにしても、絶対に勝ち切っておかなければならない試合でこのクオリティというのが残念ながら現在地。

5月23日に松本に勝って以来、リーグ戦は5試合、約50日にわたって勝ちがなく、ついに首位浦和との差は、残り試合数(16)を上回る17差となってしまいました。俊輔がアジャストしている間に、終戦してしまいそうな情勢ですが、今後俊輔が、どう監督のやりたいことと折り合いをつけていくのかは大変興味深い。

独力ではなかなかフィニッシュまで持ち込めないアデミウソンには、距離感のいい味方のサポートが必要です。この日、アデは右サイド、俊輔は左ボランチと、だいぶ遠かったんですね。ズバリ、この二人をもっと近い間隔でプレーできないでしょうか。

時代が終わったと、上で書きましたが必ずしもそれはネガティブに言っているつもりはありません。我々が見たいマリノスは相変わらずの俊輔依存型チームなのか。それはもう厳しいと言っているのは監督ですが、だからこそアンダー代表を率いてきた監督ならではの若さむき出しでソリッドと速さを追求するサッカーなのか。監督の志向性の問題でしょう。

ゲキサカによれば、

「後ろのポジションだったけど、前の選手がどんな感じかは分かった。ウチはいい選手が多いから、もっとお互いの良さを出せて、常に試合を支配できるようにしたい」というのが俊輔の試合後のコメント。当然ですが新しいチャレンジに前向きです。

理想と現実の狭間で、どのような折り合いをこれから付けていくのか。改めて、マリノスは新しいフェーズに移行しそうです。結果にこだわりつつ、1試合ずつ前に進むしかありません。

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