ついぞ聞かないシーソーゲーム。だって、マリノス、シーソーするほど点取れないでしょ。殴られたら殴り返すなんて、エンターテイメント性はないでしょ。
いや、あった。
固いブロックを作る大宮と、リーグ最少失点(試合前まで)のマリノスでも、こんな試合になることがある。
しかも、下平匠のヘディング、佐藤優平のヘディングによるJ1初ゴール、藤田祥史のATに生まれた決勝の右足。こんなメンバーの得点、一体誰が予想できたろう。
家長昭博が不在でも、ズラタン、ムルジャの2トップは超強力で、味方からの長いパス一本の処理がうまくて、マリノス守備陣は本当に手を焼いていた。
とくに2点目を失った時の、ムルジャの動きについては、マークの受け渡しがまずかったというのはあるにしても、神出鬼没。あんなに強力な2トップを有して、なぜ今の順位なのだろうか。争奪戦必至の二人である。どちらかでも来てくれたら…いや、今は言うまい。
ただし、マリノスには中村俊輔がいた。夜中の録画再生で見ていただけだが、今季最高の体のキレだったと言っていいだろう。
結果的に俊輔の左右の足から生まれたクロスが、二度のアシストを記録し、勝利に繋がった。いずれも質の高い、決定的なボールだった。
とくに1-2と逆転を許してすぐ、エリア前にするすふと進入してきた俊輔に見とれて、たくさんDFはいるのに、なぜかセンターで優平がフリー。フェイントで右足に持ち変えるのを、誰も着いてこられない。
この時点で勝負あり。この日も、度々シュートを外してしまっていた優平が、頭で狙いを定めて、見事にゴール。試合後、樋口監督が練習量と、その内容を褒めていたが、ついに起用に結果で応えた。
そして藤田。70分過ぎに伊藤翔に代わるため、ピッチサイドに立ったものの、富澤の怪我というアクシデントがあり、投入が80分にまで遅れた。
いつものように、短い時間では、彼の仕事のチャンスは一回あるか、ないか。それでも決めた。
92分、またもや俊輔のクロスから。
相手DFがミスをしてクリアできなかったように見えたが、スローで見るとそうではない。藤田のアウトサイドに向かうかなような選手たちが瞬時の動きに惑わされ、逆を付かれたのだ。
ボールは中へ。藤田の足がグイッと伸びる。大宮も勝ち点1では満足できなかったはずで、緊張した展開を打ち砕く値千金の決勝点。
最後は俊輔と兵藤が、冷静にコーナーキックをうまくキープして試合終了。この辺りも堂々とした、力強い俊輔のキープと態度が光っていた。
ところで、得点には至らなかったが、浮き球の他に、グラウンダーのスルーパスも芸術性の高いものを連発していた俊輔。キレキレで、高い位置でボールに絡んだ時は、本当にすごかった。
2ヶ月ぶりの連勝で、2ヶ月ぶりに10位の定位置を脱出。順位的な目標よりも、今は練度を高めて、来季につながる攻撃の再構築を。その思いは変わらないが、少しずつ、少しずつ、前進している気がする。
ラスト5試合。優勝や残留争いには縁がなくても、マリノスなりの戦いがまだ、ある。
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