「MF 10番、中村俊輔選手に代わって…」
またか。大黒柱が交代することへのどよめきが起こる。ナビスコの柏戦、第一線でも前半で俊輔が退くとボールの貯め場を失ったチームは、攻撃が単調になる。テンポが落ち着かないから、ロストした時の危険性も大きくなる。
残り45分でどう点をとればいいのだろうか。
「MF 20番 佐藤優平選手が入ります。」
再び驚く。俊輔の交代は、藤本淳吾ではないのか。リーグ戦では、4月26日、第9節のFC東京戦以来となる佐藤優平の出場だ。この間、1試合もベンチ入りさえなかった、言わば不遇の時間を過ごして、そこからつかんだチャンスだった。
結論から言えば、PK獲得に繋がる浮き球のパスを出すという決定的な仕事が一つできた。とにかく動き回ることができたし、相手のボールを奪う、拾う仕事もできた。
俊輔のマネなんて、始めからやろうとも思っていない。けれども、あれだけ突っかかるプレスもまた、俊輔にはできない。佐藤優平は佐藤優平でいい。できるプレーを愚直に表現した結果、こうなったのだとすればとても彼に意味のあることだし、選手起用が成功したと言えるだろう。
それくらい中村俊輔の代わりに出るのは、楽なことではないと想像する。
ところで、伊藤翔は疲れ果てていた。PKを蹴る10分も前には、既にガス欠、競るべきボールを競らなかった時、私だったらもう矢島に代えていたと思う。ただ最後のあの飛び出しは残っていた全ての力を出したという感じだろうか。
リーグ戦、日産スタジアムでの勝利はゴールデンウィークのガンバ戦以来だ。久々に、ゴール裏に用意されたお立ち台に選手が登る姿を見る。
登ったのはもちろん決勝点の伊藤翔だ。当たり前だが観戦者たる我々よりも彼自身はより一層、鬱憤を貯めていたのだ。
でも正直な思いとしては、伊藤がヒーローになる試合がこれまでももっともっとあるべきだった。こうした展開の試合がこれまで少なかった。
それにしても、広島も苦しんでいる。決定機はわずかにマリノスより多かったように思う。榎本哲也と両センターバックの集中力、ミスの少なさに加えて、広島の決定力不足。一番スタンドが沸いたのは、佐藤寿人が80分過ぎに投入された時だった。
PKで得た虎の子の1点を守り切った。指摘している方が多いように、PKを決めた直後、準備していた矢島ではなく、富澤を急きょ投入したのは冷静沈着な交代だった。
俊輔がいない、または途中で抜けた場合のマリノスは「俊輔依存が露呈する」と言われてきた。攻守ともに扇の要を失い、バラバラのチームになってしまうこともあった。だがこの日はいい方向に期待を裏切ってくれて、チームも勝利した。(多少、ドタバタした点はあったものの)
その俊輔も幸い、怪我をしたわけではないようだ。こういう接戦をものにすれば、チームが乗ってくることはよくある。
さあ、今回はどうなることか。春にとんでもない試合をしてしまった甲府との一戦は本当に大事になる。
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