【保存版】中村俊輔がシャーレを掲げる

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差別/暴力 根絶宣言を胸に刻みたい

J1第23節、J2第33節、J3第25節。これらの試合前に、対戦する両チームの主将による「差別・暴力根絶宣言」が行われた。

例えば日産スタジアムでのマリノス名古屋グランパス戦では、闘莉王中村俊輔が順にマイクの前に立ち、宣言を行った。内容は以下の通り。

闘莉王

私たちは人種、性別、生まれ、宗教、その他のいかなる理由による差別を認めないことを宣言します。私たちはサッカーの力を使って、スポーツから、そしてこの社会から差別を撲滅することができると信じ、この目標に向かって突き進むことを誓います。皆さんも、私たちとともに差別と戦ってください。お願いします。

俊輔:

サッカー、スポーツに暴力も暴言も要りません。誰もがサッカー、スポーツを安心・安全に楽しむ権利を持っています。暴力、暴言をしない、させない、そして許さないことを誓います。私たち一人一人のリスペクトの力、大切に思う心で差別・暴力のない世界を作り、守っていきましょう。

日本サッカー協会(JFA)が主催する「JFA リスペクト フェアプレー デイズ 2014 差別、暴力のない世界を!」にへのJリーグとしての「協力」だそう。

各試合の録画を見たが、概ねどの会場でも、上記の文章に則ったものが多い。おそらく上記がデフォルトなのだろう。試合直前の異例のスピーチなので主将というのは大変である。

与えられた原稿があるので概ね内容はどこも同じと書いたが、少しずつ選手が言い回しを変えている。そのことはいいと思うのだが、なかでも大宮対鹿島は、端折り過ぎている印象があった。差別と暴力をなくそうという強い決意が観客席に伝わったのならいいと思うが。

そして川崎の中村憲剛は名スピーチを行った。マリノスサポーターによるバナナ事件で差別を受けた側の選手がいることも影響しただろうが、それ以上に本来サッカーってもっと楽しくて素晴らしいものだろう?負の側面を強調されるなんて、悲しいし悔しいということが彼自身の言葉で語られていた。それも力強い言葉で。

(広島対G大阪の中継にはこのスピーチが含まれていなかった。この会場だけやらなかったのだろうか?)

今回、バナナ事件の経験を踏まえ、多かれ少なかれこの宣言に感じるものがあったサポーターが日産スタジアムには多かったように思う。

他会場の他のサポーターはどうだったろうか。バナナ事件前の私なら、中村憲剛の宣誓がこれほど胸に響いただろうか。仙台のリャンヨンギが主将としてこの宣言を読む意味を見逃さなかっただろうか。その自信はない。

差別かどうかの基準は、屈辱を受けたと当事者が感じたかどうかにある。そう定義付けると、やった側に悪意があったかどうかは問題ではなくなる。むろん、悪意があればより周囲の眼は厳しいものとなる。

今年、Jリーグが一般メディアにもっともセンセーショナルに取り上げられたのは、W杯前後の日本代表の動向以上に、無観客試合の顛末だった。Jリーグファンとしては悔しい。普段の素晴らしいプレーや、スタジアムの雰囲気は当たり前のものとされ、不祥事ばかりが大きく取り上げられる。

そして、今回のバナナ。暴力や暴言の罪も大きいが、差別の罪の比較にはなるまい。

この度、マリノスの中心的サポーターは、前節の試合前に、「ポジティブな要素だけで応援は成り立つのか?新たな挑戦」という主旨の声明を出した。全面的に支持したい。

確かにサッカーには対立がつきものだし、プロレスにおける「アングル」的な要素がある。本当のダービーと言われるものは、宗教や階級や民族をバックボーンとして歴史を紡いできたものもある。

だが、対立ならともかく、憎悪や侮蔑ありきでは。差別を助長する流れを制御できない。

それを恐れて応援を辞めるのではなく、愛のあるエール。そしてブーイングという言葉ではなく「叱咤」。

スタジアムDJによる相手チームサポーターへの挨拶時のブーイングはいらない。

相手チームがボールを保持する際に常にブーイングするのではなく、味方への鼓舞を。

野次でストレスを発散するのではなく、皆で声を合わせ勝利を掴む事で発散する。

これらは、彼ら中心サポーターが提案する、意識改革だ。

応援の仕方は自由だが、他人を不快にしていいことにはならない。ならば、従来の概念には含まれていた、対立を煽るような手法を思い切って放棄する。

これが正解なのかどうかは分からないし、今の段階で誇れるものはまだない。けれども、子供や初心者にも優しく、一度来た人がまた来たいなと思わせる要素にはなるかもしれない。ただし、応援の手を緩めるわけではないのだから、やはりこれは挑戦だ。

自分自身も他のクラブのことを捻くれた表現で書くことで、お叱りを受けることが少なくなかった。知らず知らずにリスペクトを忘れてしまったのだろう。○○を愛するがあまり、などというのは言い訳にならないのに。

今回、差別とは?を考える契機にはなったものの、絶対に繰り返してはいけない汚点を残したのは事実。今後も子供を連れて行くことができ、まだサッカーを生で観戦したことのない友人を自信を持って誘えるように。

そんな空間を作り、守るために、一人一人のサポーターができることは決して小さなことではないと思う。

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