サッカーの監督が一旦、試合が始まってからできることなど極めて限られている。だから監督は準備に命を懸ける。などという話を聞いたことがある。確かに野球のように一回一回プレーが途切れるわけではないし、ポジションは目まぐるしく変わる。最終的には、ピッチにいる選手に委ねるしかない。
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もちろん直接指示を飛ばすこともできるが、たった3人の交代枠をどう使うか、その交代策にどのようなメッセージを込めるかは重要なファクターである。その交代が遅い、あるいはしない監督は、臆病、無策、地蔵などの謗りを受けることがある。
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マリノスの選手交代は遅い。樋口監督は代えないで済むなら代えたくない、代えてバランスが崩れるリスクもあるのだという考えがベースにある。
まさかブラジルの地でも日本代表の監督も極度の地蔵で、ギリシャ戦であそこまで絶望させられるとは夢にも思わなかったのであるが、マリノスもなかなか遅い。
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マリノスのリーグでの途中出場者のプレー時間を全て足すと673分になる。これを試合数×3枠で割ると平均出場時間が出る。仮に交代枠を1つ残した場合はその分のプレー時間はゼロという計算式だ。その式によれば16分。
これを一般的に打つ手が早いと言われる外国人監督と比べてみよう。
浦和746分 (平均17.8分)
清水631分 (平均15.0分)
鹿島794分 (平均18.9分)
柏 461分 (平均11.0分)
F東 790分 (平均18.8分)
これを見ると
確かに、鹿島やFC東京は全体的に動きが早いものの、策士の印象が強い柏・ネルシーニョ監督は実に動きが遅い。交代枠を1つしか使わないで終了という試合もざらにあった。この統計をそのまま見れば、ネルシーニョのほうがはるかに地蔵である。だがそんな印象はない。まったく自らの辞任すらネタにする監督は印象操作もお手のものだ。
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しかし、おかしいなあと思って、2013年の全34試合を調べ直したら…
横浜FM 852分 (平均 8.4分)
うん、確かにこれは立派にお地蔵さんの数字である。
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そして、柏は 1899分 (平均18.6分)。ネルシーニョの動きが全然今年より早いのだ。
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はじめに断っておくべきだったが、交代が早いからポジティブというわけではないし、その監督がよく働いていることにもならない。怪我によるやむを得ない交代もあるし、交代が遅い=代える必要がないくらいうまく行っているというケースもあるだろう。0ー0の膠着時の交代がもっとも難しいとも聞く。
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また、今年マリノスの交代が早くなったのは、単純に選手層が厚くなったからとも言えるだろう。どんなに元気いっぱいでも、先発の選手より明らかに劣る選手をわざわざ入れることはしないだろう。例えばドリブル突破が効く、1対1の守備が粘り強い、など今出場している選手とは違う持ち味を持っている選手がどのくらい手駒にいるかは重要である。
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だから、齋藤学が日本代表のベンチで控えていたのには大きな意味があり、(ベンチに座らせたままだったあの指揮官の顔はもうあまり見たくないのだが)今後マリノスで鍵を握りそうな選択の一つが、藤本淳吾か兵藤慎剛かである。
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今年、入団以来レギュラーに君臨していた兵藤が控えにまわった理由は、淳吾の加入の影響だ。開幕からここまで、淳吾が怪我がちだったこともあって兵藤が先発出場した試合も少なくないのだが、二人が揃った時は淳吾が先発し、途中で兵藤が代わるというパターンがとても多かった。
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しかも、兵藤の投入は遅く、彼自身が数分で決定的な仕事をするタイプとは逆で、リンクマンであることも影響して、この交代策が効いた場面は少なかった。
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だが広島戦、淳吾が試合から消えていたため、いつもよりも早い交代となった。時計は64分。まだ30分残されている。そして最初はペースをつかめなかったが、とにかくスペースを突き、スペースを作った。職人技の一種だろう。学の同点ゴール時にも、さりげなくディフェンスに体をあて、学がシュートを打てるスペースを提供している。
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やはり、兵藤は欠かせない。そのことを自分の力で提供した。さすがである。
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この後のレギュラー争いは、ラフィーニャもいよいよ登場するために熾烈を極めるだろう。兵藤も、端戸も途中出場を良しとするような選手ではない。その強い思いが、仮に先発ではなかったとしても、チームに大きな貢献をしてくれる予感がある。そういうチームは間違いなく強い。引いて守る相手を崩すなら、やはり兵藤だ、仁だ!
そう言われる日を待っている。
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