選手交代は3人までというルールの中で、誰と誰を替えるのかと同じくらい重要なのが、いつ替えるのかというタイミングです。
横浜F・マリノスの樋口監督は、とにかく選手交代が遅いことで有名で、番記者も呆れるほどです。週末の清水戦では、1-0のリードで迎えた後半のアディショナルタイムに、ようやく2枚目の交代カードを切ったわけです。トップの伊藤翔から矢島卓郎に変えるという選択でした。
さらにピッチサイドには最後の交代選手としてファビオの姿があります。高さがありますから、相手のパワープレーを弾き返すにはぴったりの人材です。もっと早く投入しても良かったのに、さすがは交代で動かないことを揶揄され、地蔵の異名をとる樋口監督です。
しかし矢島投入からさらにタイミングをずらして交代させたかったのか、ファビオはピッチサイドで待たされたままタイムアップのときを迎えます。
マリノスが1-0で逃げ切りに成功しました。樋口監督の交代が遅い理由はいろいろあるのでしょう。ただし例えば、交代枠を使い切った後に怪我人が出ても補充ができませんからプレーの人数が少なくなってしまう。GKが負傷したら目も当てられません。そのリスクを考えると、アディショナルタイムまで枠を残しておきたいリスクヘッジの気持ちは分からなくはありません。
1-0でリードしているチームが逃げ切り策として選手交代を上手に使うというのは、サッカーが時間制限のあるスポーツである以上、妥当なタイムマネジメントの作戦だというのが一般的な考えではないでしょうか。
しかし、今年Jリーグの第5代チェアマンに就任した村井満氏の考え方はそうではありません。開幕前にJ51クラブの社長や選手の代表を前に次のような約束をしたそうです。
1, 笛が鳴るまで全力でプレーする、ということ。簡単に倒れない。倒れても笛が鳴るまでプレーを止めない。痛くもないのに痛がってピッチの上でゴロゴロしない。レフェリーに必要ないクレームを入れてゲームの進行を妨げない。プレーができる限りは全力でプレーしてほしい。
2, リスタートを早く。GK、CKのときなど、勝ってる時はゆっくりやる、そういうことがありますが、必要以上にプレーを遅れさせないように、素早くプレーをしてほしい。
3, 見苦しいような、時間稼ぎのような交替はやめてくれ。
こうしたことを求めた背景には千人規模のアンケートの結果、Jリーグに興味があると答えた人が3割にしか達なかったことへの強い危機感があるようです。
「フットボールをよく知る人はゲームの駆け引きそのものがフットボールであるし、それ自体が面白いんだと感じる人も多くいるが、関心のない7割の人は痛がったり、遅らせたりする行為に反発心を抱いているかもしれない」
と、チェアマンはあわせてコメントしています。
上記の3項目は「3つの約束」として、度々スカパーのサッカー中継のコマーシャルでも流されているため、すっかり有名になったのではないでしょうか。チェアマンの目的は質の高いサッカーを見せる、そして新規さんを惹きつけるということにあります。
その意味で、1,は同意です。2,も3,も見苦しいレベルのものについては同意なのですが、例えば上記の樋口監督の例はどうなのでしょう。見方によっては、「ATになってから、意味のない交代しやがって。時間稼ぎじゃないか」となるかもしれませんが、逆に見苦しく見えるかもしれないからと言って何も動かずに、仮に同点ゴールでも食らったらいよいよ地蔵の誹りを免れないでしょう。
また、リスタートについても名古屋の西野監督は「ボールが止まっている時間も試合の一部。遠藤保仁や中村俊輔がキックまでアプローチする時間は絵にもなる。チームに落ち着きも与える」との私見を話してます。見苦しいかどうかの判断基準を示さないと、戸惑いのほうが大きくなってしまう気がします。
チェアマン自らが、こうした方向に持って行きたい、というリーダーシップを発揮すること自体はいいと思うのですが、果たしてその方向があっているのかがピンと来ないのです。
逆に言うと、サクサク選手交代する、コーナーキックを10秒以内に蹴るとルール化したら観客が増えることになるのでしょうか。以前試合を見に来た人が、Jはすぐ選手が痛がるからツマラナイと答えたデータがあるのでしょうか。欧州リーグではATに選手交代しないのでしょうか。また、わざわざチェアマンが異例の注文をするということは、現状がそんなにもひどいのでしょうか。私はそんなケースも稀にある、くらいにしか思わないのですが。
Jの開幕から2試合、気になったのは、審判が約束に縛られているように見え、選手へのお小言が増えたように思える点です。新たなガイドラインができると、審判もアジャストするのに時間がかかるのはいつものことですが、3つの約束にそぐわないと思えるプレーをしている選手(例えば交代時にゆっくり歩いてピッチを離れるなど)に審判が以前よりも強めに注意を与えるのですが、なんかその方が気になる。私には、審判の選手への注文が細かくなりすぎたように映ります。
より面白いサッカーを求める、というのは大賛成ですので、3つの約束については総論賛成、各論反対な感じです。以前にフィジカルコンタクトを促すために、倒れても笛が吹かれる回数がガクッと減った年がありました。これは間違いなくプレーの質を高めたと思います。こんな視点での改革が必要なのではないでしょうか。
また一見さんには、まだまだサポーターが怖ーい暴れん坊たちの集団だと思われてる節があります。新規客を取り込むには、安全で楽しくて、家族連れでも過ごしやすいということをもっともっと訴えて行くほうが大事なのではないでしょうか。ですから浦和の横断幕問題がYahooのトップに載ることの方がはるかに興業的なダメージは大きいと思います。
(ユーモアや愛が溢れる横断幕もたくさんあるのに、それらは話題にならないんですね)
ですから、一部のスタジアムで実施されるグランドレベルで試合を見られる席などはとてもいいと思います。一見さんは安くするとかね。
始球式や、プロ野球チームとの連携もさらにやったらいいのではないでしょうか。日本で最も観客数が多いプロスポーツのファンの関心を向けさせるのも手っ取り早いと思います。
それにしても先週末の小林祐三とノバコの言い合いや、中町のイエローを受けたことへの主審への抗議は、みっともなく見えるのでしょうか? 真剣にやってればこそ、だと思うのですが。
いろいろ生意気を書きました。このブログもJリーグをこよなく愛する方の応援で支えられていますが、あまりスタジアムに行かない方、あるいは行った経験のない方に少しでも魅力を伝えていけたらと思います。
http://soccer.blogmura.com/f-marinos
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