信じられないほど、残酷な結末だった。僕らが愛した中村俊輔が、最高の場所にたどり着くはずだったピッチで泣き崩れている。見たかった景色と180度異なる結末。2013年、Jリーグディビジョン1の優勝は広島、第2位に横浜F・マリノスという結果が歴史に刻まれることになった。この魅力溢れたチームが、チャンピオンにもっとも近づいたこのチームが、歴代優勝記録には残らないことが悔しい。2位の存在は、我々を除いて多くの人が忘れてしまうことが悔しい。
最後の最後、ほぼ手中にしていたリーグ優勝というタイトルを自らの手で手放してしまったという事実は拭い去ることはできないが、先に広島と川崎の皆さんにはおめでとうと言っておくべきだろう。5位から最後にACL枠の3位に滑り込んだ川崎と、それよりも順位が上なのに絶望感を味わったマリノスのコントラストは、マリノスサイドから見れば等々力の悲劇として僕は語り継ぐ。
だが中村俊輔が率いるマリノスは、何か特定の敵に敗れ去ったというより、最後の最後に刀折れ、矢尽きたのだと思う。
特にラスト10試合は深刻な得点力不足に陥った。有効な手立てが打てないまま、これなら点が取れるという形が見えないまま。マルキーニョス、兵藤、齋藤学が怪我を抱えてパフォーマンスが低下する中で、ほぼ俊輔頼みになってしまった感は否めない。
その俊輔も、ひいき目に見ても、胆のう炎による入院、離脱による影響は明らかだった。夏場に無敵を誇った俊輔だが、明らかにキレとスピードが落ちていた。いや、それでも短期間によくあそこまで戻したと思う。
今更今季の戦い方を否定するつもりはまったくないが、徐々に春のような躍動するオフェンスができなくなってしまったのは、鳴りを潜めたのは必然だった。いつからか使われなくなった「堅守速攻」。夏場は乗り切ったが、最後の最後にもう燃料が残っていなかった、だから新しい引き出しを持ち出すこともできなかった。さらに言えば、待望久しかった新戦力のブレイクもついになかった。
だが、これは結果論だ。あとわずかに勝ち点を2、何処かで積めていれば、そのハンディさえも乗り越えて掴んだ栄冠として歴史に刻まれたことだろう。この戦力で2位というのも見方を変えれば立派な成績とも言える。ACLに向けて戦力の厚みを増していかなければならないのは明らかだが、果たして…。
すでにマルキ移籍や、ドゥトラ退団、学海外挑戦などの報道が出ており、来年に向けてのチーム作りは予断を許さない。仮に主力が抜けるのだとしても前に進まないといけない。
まだまだとても消化はできないけど、これがフットボール、これが人生だということなのでしょう。ならば僕は思う。我が国の希代のフットボーラーである中村俊輔にこうも残酷な試練が続くのは、おかしい。かくも険しい試練の先には、相当の栄光が用意されてなければ嘘だ。
幸い、俊輔はあのように打ちひしがれた後でも、一点を取るために引き出しを増やさなくてはいけない、などと前を向くコメントを残している。4日のオフを挟んで天皇杯に向けた準備が始まる。ベスト8まで駒を進めてきたのだから、3勝で頂点に再チャレンジだ。しかも可能性としては川崎、広島を破って優勝というシナリオだってある。
だから僕らも前を向こう。
俊輔が俊輔である限り、僕らが諦めなければ、俊輔がシャーレを掲げるチャンスはきっと来る。
まずは天皇杯を掲げる姿を見届けるために、大分と決勝のチケットを手配した。
涙の後にはきっと。
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