悔やまない、後ろを振り向かない。そんな俊輔は入院生活を「修行」と称した。そして帰ってきて、元気良く練習に参加している。一旦トレーニングを止めざるを得なかったわけだが、短期間でコンディションを取り戻すことができるのか。僕らはとにかく俊輔の復調を待ちわびるしかない。やはり最大のキーマン、名古屋戦を終えて、不在によって存在の大きさが分かってしまった。
入院前に収録されたインタビュー番組「スポーツクロス」の後半がBS朝日で放送された。前週同様、俊輔の半生を振り返る形式。
日韓W杯の落選の際の、記者会見で「すぐ次の目標に向かって、走り出す」という前向きなコメントが当時新聞で、誇り高き会見だと書かれた。本人としては、さっさと幕を下ろしたかっただけと振り返るが、その直前にチームメイトで自身は順当に選ばれた松田直樹が俯いて、「仲間がメンバーに入れなかったことが残念」とコメントしたことに、プロフェッショナルのメンタルはすごいと感動したという。
その後のスコットランドでの活躍についても、外国人として彼らと同じことをやっていてはダメだと努力を重ねたこと、言葉はわからないけど積極的にチームメイトと食事に出かけた工夫などを披露。世界を驚かせるフリーキックも決め、スコティッシュ・プレミアリーグでMVPにも輝いた。だが、そんな栄冠もとってしまえば、次の目標に向かってのスタートという気持ちは変わらないのだという。
その後の南アフリカW杯の挫折については、何度聞いてもキツかったという。表情も口調も淡々としているが、それは恐らくそこからまた成長できたからだろう。一番学んだことは、直前にチームがなかなか勝てない時も選手だけでミーティングをするなどしていくうちに、みるみるチームとして一つになって行くのがわかったという。そうしたときに大きな力が生まれることを体験した、それを今のクラブでもやりたい、と。十分やっていると思うけども。
もうひとつ、こうした大舞台で輝くことができる選手はやはり何かを持っていて、自分にはそれがなかったと客観的に分析したようだが、そんな単純な話ではないと僕は感じた。うまくいくとき、いかないとき、誰だってある。W杯のような大舞台に調子を合わせられなかったのは最終的には選手の責任だが、あの4年間は俊輔がチームの柱だったわけで、あそこまでお膳立てをした功績が色褪せることはないと僕は思う。
最後に「未来履歴書」というものが披露された。
1ヶ月後 リーグ優勝
10年後 F・マリノスの監督になる
20年後 日本代表の監督になる
という今後の目標だ。
自分に指導を受けたから、技術でもメンタルでも大きく成長できたと言われるような指導者になりたいと言う。これまでは苦手だったチームを作ることを一から勉強して、数々の栄光と挫折で培われた経験を伝えたいのだそうだ。
俊輔はずっと10年、20年先のことでも、決めて、紙に書いて、逃げられなくしてきた。きっと彼はこれからも努力をし続けるだろう。
日曜の名古屋戦、ゴール裏ではベンチ入り選手全員と樋口監督に向けた激励メッセージの横断幕が出された。
ひときわ大きな「俺たちは俊輔と優勝したい」の文字を、スタンドから見ただろうか。もう天皇杯や、次節の磐田戦に向けた修正点をイメージできてるだろうか。
俊輔さえ、MVPの彼さえ復調すればきっとまたいいマリノスのイメージになる。その彼が今年の紹介文にもあったように「闘志を束ね勝利に導く」のだ。
昨晩から一気に冷え込んできた。このまま冬になるのだろうか。季節が進む度に、どきどきの優勝争いも、スタジアムで声援を送る至福の時間も終わりが近づいていることを予感する。
2013年、いよいよクライマックス。俊輔が再び輝きを放つことを願う。
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