ミスター○○は生え抜きの中心選手に与えられる称号であることが多い。そのためか、現在マリノスで圧倒的な存在感を放つ中村俊輔や中澤佑二がミスターと呼ばれることは寡聞にして聞かない。とくに俊輔は、20代後半の、選手として最もよいとされる期間に海外でプレーしていたからごっそり間が抜けている。ミスター感がしっくりこないのは無理もない。
でも、ごく最近思い始めている。いつか、彼はーひょっとしたら引退後かもしれないけれどもー、そう呼ばれるのではないかと。それくらい、クラブの中心の中の中心だということは皆の認めるところだと思う。そうなったのはなぜなのか。
また僕も含め、多くの人が感じていた「最近の俊輔のプレーはスゴイぞ。いや、スゴイどころか見る人の気持ちまで揺さぶる」ということ。これも、なぜなのか。
それが、やっと僕の腹に落ちた。
ーーーいや、もうマリノス強くしたいだけですね。単純にマリノスが好きなんで、自分がいる間に、ほんとは監督とか上の人が考えることかもしれないですけど、やっぱ強くしたいなって思います
テレビ東京「日本サッカーのキセキ」のインタビューでの一言だ。けっこう泣けるコメント、同じようにチームのことや、これからの目標を聞かれるインタビューを何度も何度も受けているはずだが、なんだかだんだん言葉がストレートで率直になってきた気がする。同じ番組でこうも言っていた。
ーーー学とか仁とか優平とか、アンドリューとかいますけど、彼らは何千何万の中からトップに上がってきたわけなんで。もしかして彼らを上手い道に運べるのは自分みたいな選手の立場にいる人かもしれないので、1日1日無駄にしないようにっていう感じにはしてます。
間違いない、中村俊輔は深い愛に目覚めたのだ! 誰だって選手は自分のためにプレーをするし、俊輔もずっとそうだった。チームプレーをする、しないという意味ではなく、ほとんどの場合は自己のためにプレーをしていて、その延長上にチームの勝敗があるということだ。
ただ、今の俊輔の場合はマリノスを強くしたいことが一番の目標であるから、自己とチームが同一化してくるはずで、何をやってもチームのためになるというスパイラルになる。
それは肉親へのものと同じような無償の愛だ。F・マリノスという故郷のクラブへの愛が、様々な葛藤や、怪我との戦いなどを上回るから、インタビューでも憑き物がとれたかのような素直な表情になるのではないかと思う。その表情を見ると、少なくとも三年前の彼からは考えられないような気持ちに僕はなる。あぁ、俊輔はついに「解脱」したんだなあ、好きなものを好きと言える日々を送っていることにホッとした気持ちになる。
愛を素直に表現している俊輔が近くにいることを周りの選手たちにもっと感じてほしい。僕たちは彼がJリーグにマリノスに帰ってきて、純粋に力の限りを尽くしてることの喜びを噛み締めよう。
彼は特別な能力と思いを持った男だ。だから未だに代表復帰待望論が消えない。個人的にそのことが誇らしいけれども、そっとしといてくれよとも思う。なぜなら彼が愛しているのは今、F・マリノスであって代表ではないから。もはや代表に強い思いが持てないくらい、目の前のことに真剣だから。
もう一度だけ、世界の舞台で意志を持った美しいフリーキックの弧が見たいという思いは正直ファンの誰もにあるけれど、俊輔を堪能する甘美な時間はマリノスファンだけに許されたもの!という優越感もある。笑
中村俊輔は6月24日で35歳になる。彼を支えるのは、円熟と闘魂と愛のトリコロール。誰よりもピッチ上で楽しそうに、かつ激しくプレーする姿はまだまだ僕たちをワクワクさせてくれるはずだ。
どんなスターにとっても家の存在は大事だということを実感した。あるクラブがどれほど魅力的な家であるか、それはクラブ自身と、支えるファンにかかっている。
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追伸:
中村選手の34歳ラストマッチは6/23 18時、鹿島とのナビスコ杯準々決勝第1戦@カシマです。ぜひ現地で一緒に応援しましょう!