90分という試合時間は決まっている。
私たち見守るファンは、いつ得点の予感に反応し、とりわけ力を込めて応援すべきか? また失点の危険を察知して選手を鼓舞すべきなのはいつなのか?
ここまでのJ1リーグ戦の結果を分元に、小ブログにしては珍しく正攻法でマリノスおよびリーグ平均、最上位、最下位の得失点の時間帯別の傾向を分析してみたい。2013年のデータはすべて6/18現在のものである。
まず、90分の試合時間を15分刻みに6つの時間帯に分けて考えてみる。0-15分をA時間、15-30分をB時間と呼ぶと、一番最後がF時間になる。前後半のアディショナルタイムはそれぞれC、F時間に含むものとする。
J1、J2の40クラブのうち、前半より後半、つまりA~C時間よりD~F時間に得点が多いクラブは37だ。前半の方が得点が多いというクラブはわずかに3。しかも時間が進むに連れて得点が増える傾向にあり、F時間が時間帯別で最多得点(最多タイを含む)となっているのは、J1で11、J2にも11クラブある。全体の過半数がラスト15分にもっとも点をあげているということだ。これは去年のデータを紐解いてもJ1は13、J2は12のクラブがF時間に最多得点を記録していることから、それが「標準」ということだ。巷では立ち上がり5分が危険、などというがデータ上は試合終盤が危険(チャンスでもある)とはっきり表れている。
<横浜F・マリノス時間帯別得点>
左からA時間で、一番右がF
2012年 6 1 8 7 11 11 合計44
2013年 2 1 5 1 7 9 合計25
マリノスの傾向も標準的だということが分かる。それから昨年のJ1上位4チーム、今季の現在までの上位4チームはピッタリこの傾向に当てはまる。ただ昨年の浦和だけが例外で前半に得点が多く、最多得点はB時間。(でもF時間も1点差の2位タイ)
後半の追い込みで4位に食い込んだ去年も、開幕から好調の今年も、F・マリノスがいつ得点するかという傾向が似ているのは興味深い。
ここまでのマリノスの25得点は二番目に多い数字で、トップは浦和の29点だ。
浦和の時間帯別得点は…
2 3 3 3 6 12 となっている。なんとわかりやすい尻上がり。
一方、得点ワーストは湘南の11で、
1 3 1 2 2 2 という結果。
前半のA~Cで合計5点というのは実は悪くない。浦和だって8点だし、5点以下のクラブはほかに4クラブあるのだ。要するに勝負所であるE~Fに点をあげられないようでは、勝ち点に結びつかないと言えるだろう。
では、なぜ後半に偏るのか?特にFに偏るのか?
ひとつめの仮説は、リーグにおける戦力の均衡と組織で勝負するチームが多いからではないだろうか。
現在のJ1は群雄割拠で、J2からの昇格組である鳥栖が5位に食い込んだり、前年3位だったG大阪が降格したりする。2011年優勝の柏はその年、昇格したばかりのダークホースだった。それだけ各チームの戦力が均衡しているという前提がある。
しかも圧倒的な「個」の力をもった選手、チームは少なく、多くが組織対組織で勝負する。すると、陣形はコンパクトなものとなり、なかなか隙が生まれにくく、膠着した試合展開になる。だが、後半になって時間も進むにつれて、選手の体に疲労がたまってくると徹底されてきたコンパクトさが徐々に失われて、オープンな展開になる。各チームとも少しずつ表れてくるほころびを、得点チャンスとして狙うから、ますます終盤に点が入る、そんなところではないだろうか。
もう一つ、サッカーが90分だという根本的な理由もあるだろう。75分まで同点だったら、1点ビハインドだったら、どうするか。多少リスクを背負ってでも、得点を狙う事に重きを置くだろう。それは90分終わった段階での得点の多寡を競うスポーツだから、90分直前に最後の力を振り絞って得点が生まれやすくなる。逆を言えば、もう試合終了前だからこのまま逃げ切りたい思いが強くなり過ぎて、失点に繋がる致命的なミスもしやすくなる。
だから、F時間に得点が多いチームは強い。昨年の広島、仙台というリーグ上位2チームは、
1位・広島 総得点:63 F時間得点:19(2位)
2位・仙台 総得点:59 F時間得点:20(1位)
と、F時間の多さでも上位2。勝負強いという言葉に置き換えられるかもしれない。
今年のF時間得点は、J1全体では91点となり、総得点345の26%。
多い順に浦和12、川崎10、横浜FM9という順位だ。最少は仙台と湘南の2。リーグ戦再開後は、このF時間の得点をマリノスが伸ばしていけるのか、それを注目したい。F時間のゴールは記憶にも残りやすいし、同じ一点なのに盛り上がりも大きいし。
一方でF時間の失点を見てみよう。
2013年 横浜FM 1 1 2 3 3 3 合計13失点
2012年 横浜FM 4 3 4 3 6 13 合計33失点
2012年 G大阪 11 11 7 9 6 21 合計65失点
ご存知の通り、F・マリノスは昨年リーグ最少失点を記録した。なのに、Fの失点13は並のチーム以下の数字だ。勝っていたのに追いつかれて引き分け、同点だったのに試合終了直前に痛恨の失点という歯がゆいゲームが多かったという印象は、まさにこの数字に表れている。ちなみにG大阪の降格の最大の原因はこのF時間の失点の異様なまでの多さで勝ち点を逃がした事と言っていいだろう。
そして堅守で首位を走る大宮に学ぶ。
2013年 大宮 2 1 2 0 1 3 合計9失点
ただ1チーム、失点が一桁なのは素晴らしいが、その大宮でさえ、Fの失点が相対的に多い。
今後、F・マリノスが手堅く勝ち点を重ねて、大宮を上回るにはFの失点をもう増やさないことだ。
そしてあわよくば75分過ぎに得点をあげて、「試合を決める」展開に持ち込んでほしい。
最後にここまでのF時間の得点の一覧を掲載する。
第1節 湘南戦 ○4−2 83分齋藤、90+3分マルキーニョス
第2節 清水戦 ○5−0 88分マルキーニョス、90分マルキーニョス
第4節 FC東京戦 ○3−2 90分藤田
第5節 広島戦 ○3−1 80分マルキーニョス
第6節 川崎戦 ○2−1 89分端戸
第9節 鹿島戦 △1−1 90分ファビオ
第13節 鳥栖戦 ○1−0 77分富澤
Fに得点する試合は7戦無敗だ。
う〜、やはりいいゴール、勝ちに直結したファインゴールが多い!
これからも歓喜が一際強い、こんなゴールにたくさん巡り会えますように!
「75分からの応援」、みんなでがんばりましょう。
http://soccer.blogmura.com/f-marinos
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