44万1256という圧倒的なナンバーワン。
6月16日に国立競技場で開催される「東日本大震災復興支援 2013 Jリーグスペシャルマッチ Jリーグ TEAM AS ONE vs Jリーグ選抜」の出場選手を選ぶファン投票の結果、我らが中村俊輔が獲得した票数である。
今季ここまで見せてきた、周りとは一桁違うほどの高いパフォーマンスと、長年に渡って日本の背番号10として君臨した証、つまり今もなお最も金を払って見たいプレーをする選手であるという現在進行形の事実と、実績による基礎票が合わさるとこういう結果になる。
トップの得票だったことにさしたる驚きはない。あえて言えば、FW部門の佐藤寿人、DF部門の田中マルクス闘莉王らにつけた票数の差に特別さを感じた。人気と実力を兼ね備えたスターである。
選手選出についてのJリーグの公式発表には、「サポーター投票および選考委員会により決定」とあり、J1各クラブより1名以上選出、外国人は何人でもOK、コンフェデ杯に出場する日本代表選手は選出しないとあり、要するにファン投票の対象としては、J2のG大阪所属の遠藤や今野に投票はできないが、それ以外はフラットな投票の対象である。ただし、もちろん「Jリーグ」選抜だから、日本の全てのフットボーラーの話ではない。香川や本田や長友といった欧州の一線で活躍する選手との比較はできない。
したがって票数から書き出しておきながら、ここで言いたいことは最多得票がすばらしいという話ではない。31日に、出場選手代表としてただ一人、記者会見にのぞんだ彼の残した言葉から、彼がボールに託して私たちに伝えようとしていることを一生懸命に読み解いてみたい。エキシビションマッチだからこそ、その選手の立ち位置、ポリシーが見えてくるのではないかと思う。
会見の要旨は、Jリーグ公式サイトからコピーさせていただいた。
http://www.j-league.or.jp/release/000/00005109.html(http://www.j-league.or.jp/release/000/00005109.html)
「%color(blue){Jリーグスペシャルマッチに2年連続で参加できることで、大変光栄です。今回ファンの方のWEB投票で最多得票ということを聞いており、驚きとともに嬉しく思っています。ありがとうございます。当日はJリーグ選抜の選手とともに、躍動感あるゲームにしたいと思っています。一人でも多くの方にJリーグ全体で復興支援活動に取り組んでいることが伝わればと思います。僕自身もサッカー選手として、支援活動をこれからも続けていきたいと思っています。よろしくお願いします}」
リーグ代表としての誇りを感じる、キャプテンシーのあるコメントだと感じる。形だけじゃないよ、ちゃんとやるからには魂を込めた試合にするよ、と言っているのだ。
そして、僕にできることは、ピッチの上で最大限いいプレーをすること以外にない、と言う。このセリフは俊輔に限らず、プロスポーツの選手がよく口にする言葉である。四の五の言わずに、本番を見やがれ、というすごくもっともなのだがそれを言ったらインタビューの意味ないでしょ、という定番ワードだ。ここでいう「いいプレー」が具体的には定義されずに、ベストな準備をして、ベストなパフォーマンスなどと曖昧に語られる事が多い。
が、俊輔がこの試合で見せようというプレーは、非常に明確だ。
「%color(blue){エンターテイメント性の追求とは異なりますが、一人ひとり躍動感のある、ルーズボールの激しい当たりとか、普段のJリーグのゲームと変わらないような試合ができればと思います。僕個人としてはどちらかというとFKとかパスが期待されるかもしれないですけど、意識しているのは最後まで戻ってディフェンスとか、伝わりにくいかもしれないけど、そういうところまで意識してヘディングだったりセンタリングだったり、一生懸命やりたいと思います}」(一部、加筆修正)
ブレ玉のフリーキックであり、ノールックのスルーパスであり、普段は敵味方に別れて戦う選手たちが巧みな連携を見せて相手のDFを抜き去る姿が華々しい、そんなことは百も承知。だがテクニックの塊の俊輔が、魅せるプレーで歓声を浴びる事が好きなあの俊輔が、汗水たらしてサッカーするのだと言う。サボらずにピッチを駆け回ることによってしか、勝利はもたらされないというのは真理だと思う。
それに加えて、日本で一番華麗なテクニックをもつプレーヤーのそんな姿こそが、観客の心をつかみ、揺り動かし、明日からまたがんばろうという勇気を与えるということを彼は知っているのだと思う。
そこまで影響を与えるプレーを私は、たまたま今季のFマリノスの試合でも度々見てきた。揺さぶられてきた。直接FKが決まるときよりも、感じるものは深いということを身を以て知っている。
ならば、いつもと変わらぬそのプレーを見せてもらおう。そして、派手なシュートシーンじゃない、些細な、だけれども懸命なプレーに嘆息し、拍手を送る、高い観戦眼をもった観客でありたい。
同じ記者会見で大東チェアマンは、俊輔をこう紹介した。
「中村選手に会見へのご出席を打診したところ、本来であれば、チーム強化やオフの期間であるにもかかわらず、二つ返事で快諾いただいた。本日の会見およびスペシャルマッチに参加していただき、心より感謝しております。今回、最多得票数を獲得しているだけでなく、2年連続の出場とる。趣旨を深くご理解いただいている証しだ」
シャーレの行方とはあまり関係がない、だけれども、日本のエースは中村俊輔だと示す試合が来た。6月が、来た。フランスのコンフェデ杯で3得点をあげ世界を驚かせたのも10年前の6月だった。エスパニョールに移籍したのも2009年の、失意の南アW杯も2010年の、6月だった。
それから、35歳になるのもこの6月のことだが、私たちには、まだまだ俊輔と過ごす時間が残っていると信じている。
http://soccer.blogmura.com/f-marinos
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