【保存版】中村俊輔がシャーレを掲げる

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素朴なヒーローインタビューがかくも眩しい理由 (仙台戦 総括)

俊輔が持った。それなのに、寄せが来ない。フリーなことを確認する余裕があった上で、左足で押し出すようにボールを蹴り出しました。

ボールの模様までもが見えます。はっきりと分かる無回転。慌てた六反勇治は、どうにか弾くのが精一杯でした。

しかし弾いた先に誰よりも早く駆けつけていたのは、小林祐三です。右サイドバックは、中村俊輔からのリターンパスを受けようと、全力で走っていたのです。

六反が苦し紛れに弾いたボールをダイレクトで右足で合わせて、勝ち越し点で2−1。

俊輔の強烈なシュートと、僅かな可能性に賭けた小林のシンフォニー。ワンチャンスを生かして追いつかれた後だけに、価値のある一撃でした。

さらにはアデミウソンの突破から奪った、フリーキック。バイタルで動き回る俊輔やアデミウソンにファウルを繰り返すのは仙台守備陣です。不用意なファウルは止めようぜと、誰も事前に教えなかったのか。それとも、後手に回ってファウルを繰り返してしまったのでしょうか。

そのフリーキックを、ほんの少しのフェイントを入れて、六反がファーサイドに動くことを確かめたら、柔らかく蹴る。俊輔本人としてはコースが甘いということでしたが、静かにネットを揺らします。決定的な3点目。ランキングを独走するJリーグ直接フリーキック20本目のゴールです。これぞ「魔弾の射手」。六反はファーに意識が偏りすぎていたのか、クセを俊輔に見抜かれたのか。

BSで中継したNHKと、スカパーの合意により、試合後のヒーローインタビューはその希代のフリーキッカーを指名します。しかしながら、新聞記事によると、俊輔は「今日は俺じゃない」と、小林もインタビューに加わるように仕向けたのだそうです。

試合後、俊輔の次に、カメラの前に現れたのは緊張した面持ちの小林です。自らが得点するとチームが敗戦するという、悲しいジンクスのことを自分も気にしていたこと、そのジンクスを知るスタンドの方たちが動揺していたこともわかっていたことを明かします。

この試合までに通算13年で5得点。

柏時代の05年 G大阪戦●2-3

J2降格時に06年 鳥栖戦●2-5

再び、J1にて08年の川崎戦●2-3

マリノス移籍後も11年 仙台戦●1-3

さらに15年、開幕の川崎戦●1-3

誰が呼んだか、小林のデスゴール。

確かに守備の重要なキーマンである小林がゴールをすると、チームは必ず3点以上取られるというカタストロフィ。

誰だって得点は気持ちがいい。その足で生み出した得点が、チームに勝利をもたらすことの愉悦よ。

13年に渡って、小林祐三はそれを味わうことがなかった。プロ入り前の選手が決勝ゴールを決めることさえあるのに、260試合以上のキャリアがある小林には、これが初めての経験だったわけです。

嬉し恥ずかし、ヒーローインタビュー。ガンダムや音楽の話をする流暢な小林はそこにはいません。

陰日向に咲くが如く。ホームでのゴールなら間違いなく、俊輔と二人でお立ち台にも立っただろうに、静かに勝利を振り返っていました。間違いなく、リスクを恐れずに一生懸命に走り込んだものだけが与えられるご褒美を、彼は掴んだのです。

おめでとう、ありがとう。

おー、小林祐三

ヒーローインタビューと言えば、俊輔は最早定番のように、ベンチやベンチ外のメンバーへの思いに言及しました。

俊輔自身も怪我で出遅れて、焦ってまた離脱し、不慣れなボランチで試され、時には外されという、今季のここまでだったから、なおさら思うところがあるのでしょう。

上位に届くのか、届かないのか微妙な立ち位置のマリノスですが、試合に出ていない選手たちの分も背負って戦えているのか。それはチームである以上、とても大切なことと言えます。

面と向かってではなく、ヒーローインタビューでマイクを通してだからこそ語れることがあります。あと4試合、全試合でマリノスのヒーローインタビューが行われてほしいものです。

そこで発せられる言葉を楽しみに、神妙に受け取っていきたいです。そして小林祐三のインタビューが次回はホームで実現しますように。

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