92分、ファビオはもうとっくにガンバゴール前でプレーしていました。
エリア付近での浮き球を回収しようとしたところ、遠藤と交錯して倒れてマリノスにはフリーキックが与えられます。
ベンチの長谷川健太は不安げな怒りを隠せません。矛先はプレーしていた選手ではなく、微妙な判定で絶好の場所でフリーキックを与えた主審のことでしょうか。
ラストプレー。ほぼ全選手が、エリア内にいる。カベは6人か、いや7人。
ボールの前には俊輔と兵藤慎剛。
もうとっくに金色のユニフォームは、汗を吸って黒く濁っている。最後の力を振り絞っての、一蹴りへ。
これぞまさしくノーチャンス。あのコースに来ると分かっていても、何人の人間が止められることでしょうか。
美しき完璧なる弾道。速さとコントロールを兼ね備えた完全無欠のフリーキック。手術とリハビリを経て、長い間のガマンをぶつけた渾身の一撃。直後、試合終了。本当にラストプレーでした。
「練習でも当たっていたので、今年はフリーキックが入ってよかったです」
ーコースについては?
「新しいボールになって、カーブをかけるというより当てるように蹴ってスピードを。高い選手が何人かいたので、それを目印にして。はい、うまく当たったと思います」
ー大きな価値になったのでは?
「いや、それはもう、これからですね。この後の練習だったり、情熱だったり、熱意だったり。もっとチームで出して行かないと、今日のように追いついたゲームがもったいなくなる。これからだと思います」
ー自分のプレーについては?
「つなぎの時間が長くて。自分のプレーを出し切るという感じではなかなかないが、そこはガマンしてチームのために今やっています」
ー次節への意気込みを
「暑いですけど、こんなにサポーターの方が来てくれている。次またアウェイですけど、サポーターのために一生懸命プレーして勝ち点取りたいです」
2−2での引き分けに持ち込んだ瞬間、エリク・モンバエルツ監督は勝利のときよりも遥かに大きく、何度もガッツポーズを繰り返していました。苦労と不運が重なった結果、なんとか手繰り寄せた勝ち点1には大きな価値があります。
確かに勝利無しは7試合に伸びてしまい、2ndステージの順位は16位にまで低迷。まだトンネルを抜けたとは言えませんが、後半のアデミウソン、ラフィーニャ、俊輔による攻撃は、個人技のクオリティの高さがありました。
ラフィーニャがどこまで稼働できるかはまったくの未知数ながら、アデラフィの即興的なプレーは脅威となります。もう一つ、彼らを評価しなくてはならないプレーがありました。
齋藤学が、東口と激突して、直後に東口の威嚇を受けた場面です。プレーの裁定は学のキーパーチャージを取られて警告処分。止まれなかったとは言え、東口がキャッチした後に衝突しているのでこれは仕方ないかと思いました。ただ東口がボールをぶつけんばかりに倒れている学に詰め寄った行為は恥ずべきものだと思いました。
そこに真っ先に、激昂しながら間に飛び込んだのは、アデとラフィ。あわや揉み合いになるかというシーンでしたが、彼らは冷静に学を守ったのです。冷静なる闘争心。絶対に守る、絶対に追いつく。ファイティングスピリッツがある、素晴らしい選手たちです。
そして、愚直なトライを繰り返して、83分のラフィからの浮き球を、アデが倒れ込みながらも、絶妙なボディバランスで体位を崩さずに右足でコースを変えて、ゴールの隅へ。そんな1点目に繋がったわけです。
2点目は、俊輔の咆哮に三門雄大ら周りの選手らが笑顔で祝福しているのに対して、アデはむしろびっくり!という表情。
マリノス側のスタンドも今年一番の盛り上がりだったでしょうか。俊輔が得点後にスタンド向かって手を振っていた先は、おそらく家族たち。一番下の娘の誕生日に、ゴールを決めて欲しいと言われ、それに応えてしまうのだから、恐れ入ります。神戸戦20分、山形戦70分、柏戦80分の出場時間がこの日はついにフル出場。
完全復活といっていいでしょう。
ただまだチームとしての最適解がはっきりしないまま、次節はまた選手の入れ替わりがあるでしょうか。さらに次節は、2ndステージ3連勝で年間でも首位を伺う広島戦。しかも敵地です。一筋縄ではいかないことは分かっています。
だが、中村俊輔は健在なり。中村俊輔は健在なり。これからが我らの季節だ。
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