アデミウソンが前線でほぼ孤立していた。それでも懸命にボールをおさめて、味方の攻撃を待つ。ただし中盤はスカスカで、援軍が到着するまでには相当な時間がかかる。
卓越したボールコントロール、細かなタッチでボールを浮かせたり、相手のチャージを巧みに交わす。だがそのテクニックを使っても、なぜか眼前の1対1で抜こうとするとロストする。不思議なアデミウソン。
前半は5-2-2-1で後半は4-2-3-1。簡単に言うと富澤清太郎が最終ラインから、ボランチのポジションに、中町公祐がもう一列あげて、改善されるまでの45分。ベタ引きのような、セカンドボールもろくに回収できない、工夫のない前半だった。
後半になるとボールは多少持てるようになったが、ピンチは増えた。中澤佑二のコメントによれば、相手の前線2枚対こちらのCB2枚になる場面が続発した。システムを途中で移行した時の課題ということだろう。
前半20分頃にレオシルバのミドルシュートがバーを叩いたのに続いて、山崎のシュートがポストを打った時はまさに2対2だった。あれをやられていたら…。
その直後にマリノスが反撃。得点の場面は、とにかく三門雄大の積極性と運動量が光る。アデミウソンの落としをハーフウェイ付近で受けると、中町にボールを渡す。
中町はアデミウソンがDFを引き連れて、左に流れるのを見ると自らは中へ。でも右に走り込んでいる三門のコースを狭めることになる。
自分で打つのか? 三門との距離が近づき、パスするチャンスすら減ってきた。中町、持ち過ぎではないのか?
だが中町は狙っていた。きちんと転がせば絶対に三門にパスを通せるその場所を。それがDF大井の股下だった。
後は三門がそれを流し込むだけ。名実ともにマリノスの一員になれたと振り返る移籍初ゴールが、古巣相手の決勝点となる。相手が新潟だからこそ、三門は派手なガッツポーズなどせずに、駆けつけた仲間と抱擁をするだけ。
お立ち台にはその三門と、2試合連続完封に貢献の「帰ってきた」飯倉大樹。苦労の数だけ人は大きくなれる。順風満帆ではない二人のインタビューはいつもより少し清々しかった。
トータルで言えば、ラファエルの不在が響き、新潟の前線の迫力不足に助けられたところはある。マリノスの守備が盤石だったとは思えない。自分たちの問題なのか、こちらの5バックを見越して4-4-2に変えた新潟・柳下監督の術中にはまりかけたのかは、正直判断がつかない。
今後、どちらのシステムがメインとして考えられるのか、というか併用できるほどの完成度とは思えなかったが、改めてシステムは二の次と思った次第。
アデのチームプレイと献身さ、三門の非凡な運動量はシステムでは説明できない。そこは、能力を超えた思いの強さがあるからではないか。
仲間の選手たちが口々にアデを褒めていた。エンジンがかかってきたとは中澤の弁。藤本淳吾は「レベルの違いを感じた」とさえ言う。
確かにアデの調子はまだ上がっている。できないと思われておいて、この日は楔で受けるプレーもいくつも行った。底知れぬ21歳だ。
連敗で始まった大型連休も、最後は連勝締め。上位との差も少し詰めて6位浮上となった。すごくいいとは言わないが、決して悪くない。
1stステージという短いタームではなく、年間を通じてどこまで上昇できるか。楽しみが増してきたのは間違いない。
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