寒々とした日産スタジアム。長く、しつこく降り続ける雨が最後まで止むことはありませんでした。マリノスもまた試合のペースを終始、大宮に渡すことはありませんでした。
大宮は今季初めての公式戦で、仕上がりに差があるのは明らか。ただし後半は大宮のエンジンがかかってきて、ACLの影響からマリノスは疲れが見え始めていました。それでも決定機らしい決定機を相手に作らせずにシャットアウト勝ち。
けれどもまだマリノスの本領発揮とまではいっていない、もっともっと強くなるので、「完勝」という言葉は使わないでおきます。
ゴールシーンを振り返ると17分の藤本淳吾の先制ゴールはうまい！と唸ったけれども、88分のあのロングシュートはスゴい！！と戦慄するしかありませんでした。ゴール裏で見ていたため、まさかあそこまでゴールから距離があるとは思わず、後から映像で確認してびっくりしました。
決めた伊藤翔という名の怪物、これはひょっとして、とんでもない才能の開花に我々は立ち会おうとしているのかも。そんな期待を抱かせるスーパーゴールでした。やはりこの男のもつ潜在能力は日本人離れしたものがあります。これ以上ない鮮烈なデビュー弾となりました。
さらにマリノスのファンの心をしっかり掴んだのは、88分しっかり走り回って、相手守備陣深くまでボールをチェイスしたこと。よく頑張りましたね。はるか年上の俊輔がやっているのだから、サボれないという指摘もありますが、足が止まりかけたのに、手を抜くことはありませんでした。それもまた素晴らしいと思いました。
この強烈なロングシュートの影に隠れてしまったけど、栗原勇蔵にアシストが記録されました。え？という方、ちゃんと見てください、伊藤翔がワントラップする前、相手に競り勝ち、ボールをポンと前に出したのは栗原ですよ。積極的な守備でしたね。ゲーム全般で言えば、プレッシャーがかかる場面が少なく、放り込まれるボール、入ってくる人を弾き返すのは得意な形ですから。中澤佑二とのコンビで貫禄の完封でした。
確かに、全北戦を直前に体験しているだけに、プレスの圧力には大きな差があったことでしょう。マリノスもまだまだこれから上げていかなくてはなりませんし、次節の清水は大宮より動けているようですから、この一週間でのさらなるコンディション向上が望まれます。
もう一つだけ、この日のポイントとして覚えておくべきは俊輔がサイドに流れたことですよね。この日、俊輔がいい意味で目立っていなかった時間が多かったと思います。大宮は去年の夏の対戦時と同様に高橋または金澤がマンマークして俊輔を追いかけ回しました。基点である俊輔にボールが渡る回数を抑える、あるいは前を向かさせないという狙いです。ただし、後のコメントでもわかるように、追いかけ回す相手の習性を利用した俊輔はあえてサイドに開いて中央にスペースを作りました。そこを利用したのが、周りに敵の少なくなった藤本淳吾でしたが、俊輔にマークが集中する分、フリーな淳吾はうまいですねえ。配球もできるし、突破もできるし。「ゼロックスで外してしまってたんで、ホッとしてます」と振り返ったゴールもお見事でした。あれで、ゼロックスやACLの呪縛から解放されましたしね。
この戦い方は、俊輔が封じられた時どうする？という去年から突きつけられていた課題に一つの解答を出したように思います。この役割を見ると、兵藤と淳吾の良さは異なります。どちらが俊輔中心の闘い方に必要かというと…。それもこの先々の状況によって変わってくるでしょうが。
ヒーローインタビューで今季のゴール目標を聞かれて、サポーターから「背番号(25)！」とヤジられ、「背番号は無理だあぁ！」と返した明るい淳吾。とにかくゴールで貢献したいと勝負師の顔で答えた伊藤翔。さらに左SBとして先発し、古巣大宮のサポから度々ブーイングを受けた下平も、クロスの精度なかなかのものがあり、気持ちの入ったいいプレーをしていました。新戦力が躍動、いい選手とったで。
けれど、ナイスゲーム！というよりは、リーグ初戦での今季初白星にみんながホッとしているところですが、まだ始まったばかりです。
2-0の、二つとも技ありのゴールですから、あんなのがいつも入るなら苦労はしないわけです。去年の終盤はまったくあの手のゴールは決まりませんでしたから。だからこそ、相手を崩す形の習熟やコンビネーション向上が重要。
この一週間がますます大事になり、そこから5連戦。清水、広州、徳島、メルボルン、甲府。この過密5試合でマリノスの今季の戦い方が確立されること、そして控え選手の使い分け方が見えてくるといいと思います。
まずは勝利、ありがとう！
試合もレギュラー争いも、ここからが本番です。
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